嫌われ松子。川尻松子。

病弱な妹ばかりをかわいがる父親に振り向いて欲しくて、面白い顔をして父を和ませるかわいらしい子供時代の松子さん。
いつも気難しい顔をして妹を心配し自分には冷たい父が、その顔をしたときだけ楽しそうに笑ってくれるのがうれしくって何度も何度もおもしろい顔をするのが印象的です。

子供である松子は松子なりに、父を愛し妹を心配もするのですが、あまりにも一方向にだけ向く愛情にいつしか父へのねじれた愛情と妹への嫉妬で自分をきちんと保てなくなってしまうのです。

幼い頃からの家族間での愛情の交換、気持ちのやりとりは大きくなってからも大きく激しく影を落とすのだと、映画が進むほどに実感してしまいます。

高校教師のときに出会った生徒とあとになってから再開するのですが、見ている人の願いや思いとはうらはらにどうしても松子さんは平凡で心やすらぐ生活にはいけないのです。


私だけを見て愛してくれる人だから、あの人とだったらたとえ地獄へだって一緒についていく。
同じような境遇にありながら、自分とは決定的に違う友にたいしていう言葉は、とても悲しく響きました。


もう一度、松子が無邪気に未来を信じてくれたなら、その彼女の魅力である脳天気さが救いになってあんな死に方はしなかったかもしれない。

説明するのが難しい映画ですが、松子はとてもかわいらしい。
松子は、家にいたときには自分は誰にも愛されていないのだと思い込んで絶望し出て行ってしまうのですが、その後彼女なき家の様子は、彼女がいないからこそ崩壊してしまうのでした。

父は妹を偏愛しているようで、松子がいなくなった後には松子をとても心配していたのです。
妹は大好きなお姉ちゃんに嫌われ否定されることで心のバランスをくずしてしまいます。

大人になって家を出て、ろくでもない男に振り回されて振り回されて堕ちたり上がったり堕ちたり上がったりして。
当たり前に当たり前の形で愛してもらえないということは、こんなにも人間の一生に影を落としてしまうのかなあと悲しかった。

要所要所に織り込まれる笑いが効いていて、とても楽しくテンポよくお話を味わうことができます。
この映画に漂うテーマも家族の愛で、人と人の間の愛情です。



人間にとって大事なのは、人に何をしてもらったかではなく、人に何をしてあげられたかなのではないか。



笑いを織り交ぜながらすすむサスペンス仕立てのこの話が終わる頃に、この言葉が痛く実感されてきます。
リュウには初めから松子が神に見えたのでしょう。最初は女神様のように。
最後もやっぱり女神様のように。

設定はかなりアレでスキャンダラスだけど、そのスキャンダラスな状況の中で、松子の魅力がキラキラと輝いているのがすごかった。
かわいそうであるがゆえにものすごく愛らしくて、タイトルと違ってとても愛されて観客に見守られる松子です。

なくなり方が悔しいのだけれども、死んでしまう前にとても愛していた妹への心に気づき、迎えてもらうことの出来たことが自分のことのようにうれしかったです。

色合いが綺麗で色の効果もありウキウキ見られます。
そうかと思えば叫びたくなるような切なさにギュゥゥゥと締め付けられる思いもします。

ジェットコースターみたいに楽しめる映画です。
観た後に思うことは多分…



松子かわいい!!!!!
に違いないと思いますよ。
是非、楽しんで観てきてくださいな。